平和集会、2002年9月26日
2001年10月、BALANCE誌掲載
平和集会@サンフランシスコ
2001.09.29
Dolores Park, San Francisco
集会前夜の金曜日、サンフランシスコのローカルニュースは約1万人の参加者を予想していた。大方のアメリカ人が報復賛成という状況もあって、僕はそれ程の人数を期待していなかったのだが、伝統的に平和主義がいかなる状況でも広く主張されるこの地域ではむしろ少ない数字だったかもしれない。
サンフランシスコは短いインディアンサマーに入って朝から雲ひとつ無い快晴。ポジティブな平和のための活動には打って付けの日和となった。この集会はAct Now to Stop War and End Racism(A.N.S.W.E.R.、「戦争停止と人種差別の終結のために今行動しよう」)をテーマにオーガナイズされたもので、当日には予想通り約1万人が集った。この日はサンフランシスコの他にもワシントンDC、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、マディソン、ポートランドなどアメリカ国内の都市でも平和集会が繰り広げられていた。
朝11時過ぎ、ミッション街に近いデローレスパークにはカラフルなプラカードを持ち、時にはコミカルなコスチュームを着た人々が集まり始めた。アメリカン・インディアンの聖なるドラムと踊りが公園に集結した人々を歓迎する。
集会は多彩な背景を持つ人々が次々にステージに上がり、独自性を活かしたスピーチで共感の拍手と歓声を呼んだ。南米出身で内戦を経験した人、アメリカ生まれのパキスタン人女性、バークレー市内の高校生の女の子、アメリカ・インディアンの男性、ベトナム戦争から生還した兵士、パレスチナ紛争におけるイスラエル政府の言動を批判するユダヤ人女性、黒人のキリスト教牧師などがスピーチを行った。彼等の話は、それぞれの民族的ルーツや実体験を基にしたものであるため、簡潔ながらも説得力に満ちている。聴き入る参加者を見渡すと、老若男女、ありとあらゆる人種の経済社会宗教的背景を越えたこれも多彩な人々だった。
主張と批判の内容も様々だ。9月11日のテロ攻撃以来、ニュースの中心となってきたブッシュ政権の反応を「報復を前提とした無謀な戦略中心の言動」と批判する人々が多かった。さらに大手企業メディアによる軍事報復行使を煽る低質な報道内容。アラブ系人種に留まらず、インド人やアメリカ国籍の中近東系の人々への一般市民による暴力と差別。テロリストの調査と摘発を理由とした国民の自由とプライバシーの明らかな侵害政策。現地での影響や損害を省みないアメリカ企業の海外での経営手段。広い範囲に渡る自国への批判が圧倒的に共通の話題となった。
さらに、人種差別を捨てて平和な団結を試みる事と、その団結を元に世界のあらゆる人々と争いのない社会を実現する事などが提唱された。テロリストに対しては、アフガニスタンの罪無き人々を傷つけることなく、会話を持つ事を前提とした外交によって犯罪者達を国連のレベルで裁くべきだが、軍事行使は絶対反対という主張が中心。ブッシュとビンラディンの写真を並べて「同じ憎しみ、違う顔」というプラカードからは、テロリストも軍事行使しかアタマにないようなブッシュも同じではないのか、という疑惑がありありと伺える。
ベイエリアに住む日本人も日本語のプラカードを掲げて参加していた。オークランドにオフィスを持つJapan Pacific Resource Network(JPRN、日本太平洋資料ネットワーク、http//www.jprn.org/)というNPOの人々が中心だった。
オークランドに住むデッドヘッズのジェームスは「僕達のこの運動は特別なものじゃない。過激なものでも何でもない。単に平和を求める人々が平和に集まって希望の祈りを捧げているんだ。今は一人一人が相反する考えを持って悩んでいる時。テロリストの行為は認めないし、犯罪者は裁かれるべきだ。だけど、今までの歴史を見れば軍事的報復が平和を確立した試しがないのだから、僕達は報復の道とは違う次のレベルへ進化するためにはここに集まった人々のように祈る気持ちと希望を持って訴え続けなければならないと思う」と、笑顔で語っていた。
コミュニティーベースの平和集会となると、もちろんWavy Gravyが参加する。彼のコミカルで明るいスピーチを待ったのだが、彼はステージに上がらず、終始公園に集った人々と話し合い、笑い声の中に立っていた。幼児を乗せた乳母車を押す母親や子供達の手を引いてやってきた親達もいる。政党、政治団体や過激な反体制的政治グループの臭いがしない。デモをする人々にも挑発的な行為に走る者もいない。正に平和を切に願う一般人のコミュニティーによる集会だった事が印象的だった。
アメリカ人にとっての「自由」、そして「自由を守る」という事が、多くの解釈の可能性を秘めた大きな課題である事に今さながら考えさせられる一日でもあった。今日の時点で60%を超えるアメリカ国民が軍事報復に賛成、20数%が反対という状況だ。ジェームスの言う平和への進化は、この度の同時多発テロを機会に再び長い道を歩み出した。少なくともサンフランシスコでは、今日がその第一日目だったのだ。
文 by wolf
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