Sound Tribe Sector 9
2002年4月、BALANCE誌掲載

 オーガニカ。つい先日まで、エレクトロニカの隣にさりげなく静かに座っていたサウンド。2000年を転機に独自のファンコミュニティーを形成しつつある音だ。

 Sound Tribe Sector 9はテクノ、ファンク、ダブなどのビートを基本に即興を行うオーガニカバンドのひとつ。90年代後半、ジョージア州アセンズでジャズファンクバンドとして活動を始めて以来、全くオリジナルな世界を築いて来た。反復されるパターンと様々なビートが織り合いながら、バンド全体が即興を行う事でうねりを加え、オーディエンスは自己と周囲、地球、宇宙が同期する感覚を体験する。当初、エゴのないコレクティブな即興、調和がとれたバンドとしてのサウンドで知られるようになったため、個々のメンバーについてファンが語るようになったのはごく最近の事だ。今年のツアーで紹介された新曲に至ってはダウンテンポのサウンドスケープ的な一面も見せ、ホットなショーの中でも瞑想的なスペースと自己の心情を反映する余裕を与えてくれる。

 これにやられてしまうファン達は実に様々なリスナー志向を身持っている。オーディエンスはバンドファンが大半を占めるが、その多くがSector 9のショーでシーンの最前線を体験していると自己認識している様子だ。普段はビル・ラズウェルのダブ、Kruger Dorfmeister、Thievery Corporationなどを聴きながらチルしている人もいる。ドラムンベースのファンも多い。

 Sound Tribeの音楽の背後には新世代のラスタ的なライフスタイルがある。バンドとしての目標を音楽以外にも持っているのだ。「TIME IS ART」のメッセージを、音楽とそれに伴うバイブレーションを通して人々に伝え、観衆を含めた共同体としてエネルギーとヒーリングを交換する事。既成宗教やカルトなどとは全く異なるスピリチュアリティーのあり方を模索しながら、クリエイトする事で自ら宇宙や自然が示す時間との同期を計っている。

 彼等のステージは、その中心に大小のクリスタル、マヤ文化のシンボル、ピラミッド形のフレーム、キャンドル、草花などが配置され、優しいオーガニックな印象を与え、バンドメンバーはそれを囲むようにプレイする。入場したファン達は、専属DJとMCによる味のあるムード作りに身体を揺らせながら、ステージが祭壇であるかのように近づき、一時の平和なエモーションを感じ、受け入れる。

 ショーが始まると、そこには厳かな美しさが漂うスペースが生まれ、ミュージックとダンスを媒体とするコミュニケーション、バイブレーションの交換がバンド、クルー達、観衆の間で自由に、ポジティブに行われる。

 Sector 9にとって、オーディエンスが心を開いてそのエネルギーの交換に自主的に参加する事の意味は大きい。ただ聴く、踊るだけでは真の参加は困難だ。ファンの意図的な精神的参加、楽しさをシェアし、リスペクトする姿勢が、バンドの目指すアートを最大限に拡張する。そこにはすでにライブバンドによるコンサートという場を超越した持続的なサイケデリック体験がある。

 ショーが終わって自宅に着いた時、君の中で何かをクリエイトする願望があれば、君のSound Tribeとの出会いは本物だったと言えるのだ。Time is ART、You are Love、Peace is NOW。

文 by wolf

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