2004年07月10日

祭典前夜

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モンゴル最大の祭典、ナーダムを三日後に控え、私たちが到着したばかりの街は活気に満ちていた。幸い今回の宿もホテルではなく、間取りの広いアパートを借りることになった。多くのホテルと観光客が集中する中心街から暫く歩いた場所で、周囲は一般市民の住宅街だ。市場もすぐ近くにある。外国人はたまにしか見かけない、ウランバートルのアーバンライフのただ中にいるという実感がある。

ナーダムは相撲、乗馬、弓矢などを競うモンゴル版オリンピックとも言える競技大会が中心だが、モンゴル人たちにとっては大切な祭日であり、人によっては一週間の連休でもある。正月よりも大きな祭日週間といっても良いだろう。近所の市場はナーダムの数日前から祭日を祝う料理の準備をする人たちで賑わっていた。アパートの玄関から少年がお金を握りしめて飛び出していく。数分後、彼はパスタ二袋と正体不明の食材を持ってアパートビルの中に飛び込んでいった。使いっ走りとはよく言ったもので、私にはどこか懐かしい風景だが、アメリカでも日本でもそんな光景は近頃全く見た覚えがない。

ナーダムの前夜、アパートの門前で夕涼みをしていた私の前に一台の車が止まった。太った中年女性が大きな買い物袋を下げて降りてきた。それに続いてその亭主と思われる男性が一頭の動物を車から引きずり出した。生きた山羊だった。そして、彼らは近所の人たちの手助けを借りてその山羊をアパートの一室まで引きずり上げたのである。通常のアパートが屠殺場になり得るとは想像もしなかった。新鮮な肉であるには違いない。しかしその後三日間、この山羊の死臭がアパート中に充満したのには大いに閉口した。

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モンゴル人の食べ物は主に肉で、大量の山羊、羊、馬、牛などを消費する。市場の周辺には動物の肉の臭いが充満している。ボロボロのロシア製ワゴン車の荷台には頬肉まで削がれた馬の首が横たわって笑っていた。大きな骨が路上に捨てられていたり、肉売りの露店のテーブルの下には山羊の首がごろごろ転がっていたりするのは通常のようだ。そのテーブルの上にはありとあらゆる肉と内臓が転がっていて、人々は喜々として雑談しながらそれを品定めをし、買っている。私たちの感覚では壮絶な風景と言わざるを得ないが、日本では頭付きの生魚やまだ動いている伊勢エビなどが新鮮な食べ物だと見なされるのだから、それと同じ感覚だとも言える。

Posted by taro at 2004年07月10日 00:59
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