2004年08月05日

灰色の空の下で

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「中国は凄い!」今年の春、義父は急速な成長度に近年さらに拍車がかかった中国の製造系産業の現状を視察し、帰還した後幾度もそう言った。超経済高度成長期を迎えたこの国の急激な変化は、タクシーで北京を数分走っただけで確かに見て取れる。視界に入る人間の数の多さも凄いが、建設中の高層ビルの多さも凄い。新しい自動車の数も凄い。街の人々の表情は一般的に明るく、笑顔や笑い声が歩道に溢れている。そして、これらの全てが巨大な灰色の空の下で蠢いている。それがウランバートルから汽車で北京に到着した直後の私の印象だった。

冷夏のヨーロッパやモンゴルの気候と異なり、北京の湿度は高く、スモッグを伴ってこの都市を覆う靄は視覚的に手のひらでも切れそうなほど重く分厚い。晴れた日の日中でも地上レベルの可視度は2キロあるかないかで、すぐ傍のビルでさえスモッグと靄の中で灰色に霞んで見える。この異様な空気の中を私たちは主に徒歩とタクシーで移動している。

北京での滞在予定は約二週間だが、リンが中央美術学院の生徒たちと共同製作を行うため、いわゆる観光のための時間は限られている。到着後の数日間、私たちは北京の主な観光名所を訪れた。歩くときは、なるべく主要道路を避けて「裏道」を探索する。観光スポットや新興中流階級が有名ブランド商品の消費に奔走する地域から外れると、人々の生活の姿が浮かび上がってくる。今のところどこへ行っても危なそうだとかいかがわしいという印象は全くない。そこはまた日本人としての私の世代にとっては懐かしさが凝縮された風景でもある。

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近所のおじさんたちが将棋盤を挟んで縁台に座り、団扇を煽ぎながらビールを飲んでいるのを最後に見たのはいつだったか。夕暮れ時、あちこちの窓の奥から聞こえてくる炒め料理の音と香り。いたずら小僧どもに喚き散らす若い奥さん。井戸端会議に花を咲かせるおばさんたち。金魚売り、きりぎりす売りを見るのは一体何年振りだろう。

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そんな街角の小さな公園を賑わせているのは主に中年以上の大人たちである。彼らはそこでグループになって太極拳、剣舞、扇舞、さらにはサルサで踊り、中国将棋やトランプを囲んで雑談に耽る。新興住宅地の周辺には西洋風にきれいにまとまった大きな公園もある。北京の人々はそのスペースを頻繁に利用していて、公共の公園という空間が無駄に感じるようなことはまず無いと言っていい。現在の北京では、このような情景を高層ビル建築現場の谷間で見ることになる。

ベルリンのギャラリーで中国の若手写真家たちが新旧混在する都市風景を描写したフォトを数点見た。私たちが見ている北京はそのような風景に満ちている。さらに、今や中国全土で同じようなことが起こっているのだと認識するに至って「なるほど、中国は凄い!」と言わざるを得ない。その一方で、この急激な発展が中国、さらに世界にどのような影響をもたらすかは今のところ想像の域を超えない。

Posted by taro at 2004年08月05日 04:17
Comments

今年の3月訪れた中国、北京ではなく広州でしたが、文中にある光景を目にして中国への認識を新たにしました。 写真も私が裏道で見かけたのと良く似ていて、急速に発展する中国大都市に共通した現象ではないかと思います。 日本に間もなく確実に追いつくであろう一面と日本が失ってしまった一面とをまだ持ちつつ人々が生活している中国は、いまどの国よりも興味深いのではないでしょうか。

Posted by: 網野俊賢 at 2004年08月12日 12:40

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