2004年09月14日

赤い灯り

091604_rooftops.jpg

雲南省の麗江へは峨眉から中継点の挙枝花へ夜行寝台列車で向かい、さらにバスで8時間揺られて辿り着いた。麗江の旧市街はその風情ある街並みと1996年の震災でもその大部分が崩壊しなかったこの地方独特の堅固な家造りで知られ、峨眉山と同じくユネスコ世界遺産に指定されている。震災で崩れたのは新市街の建物がほとんどで、その後中国政府は旧市街の建築方法を取り入れて新たに開発に取り組んでいるほどだ。

091604_singers.jpg

雲南省の人口の五割は漢民族、その他はバラエティーに富んだ少数民族が共存している。高瀬川が流れる京都の木屋町を思わせる街並みを、それぞれ美しい民族衣装をまとった女性たちが歩き回るさまは、中国の膨大な文化背景をまざまざと感じさせる。旧市街の屋根屋根を見下ろす周囲の丘からの景観を目にすると中国の歴史を数百年遡ったような感覚に捕らわれる。夜になると無数の赤い提灯に灯りが点り、川の流れにも灯りが映っていかにもアジアらしい、由緒ある街の風情を見せる。

091604_lanterns.jpg

石敷きの歩道を歩くと、丘の上から見た旧市街とは全く別の顔が現れる。かつて歩道に面した古い家屋の一階は、生活必需品を売る店がぽつぽつとあっただけだった。今はそのほとんどがお土産屋、食堂、カフェ、ホテルや旅館になっていて、その前を観光客が群れを成して歩き回り、買い物をし、食事をするだけの街になっている。この状況を最初目の当たりにしたときは「何が世界遺産だ」と憤りさえ感じた。しかし、この変貌にはこの土地独自の理由があった。

091604_architecture.jpg

麗江周辺の山々は、玉龍雪山、虎跳峡や中国政府が「正式に定めた」シャングリラなど素晴らしい自然と景観を持つほか、木材の産地として知られていた。しかし繰り返し発生する洪水と土砂崩れの原因は木々の過剰な伐採によるものだとされて以来、中国政府は木材産業をほぼ全面的に禁止し、逆に植林政策に転じたのである。その結果として起こった失業問題を解決するために麗江旧市街の観光開発を進めたというわけだ。

世界遺産に指定され、ワールドクラスの観光地となったこの街は中国の人々の誇りでもある。街を訪れる観光客はお土産を買い、民族衣装をまとった女性たちと記念スナップを撮って、夜は酒場通りで酔いしれる。絵葉書や写真集で見る古い白黒写真だけがこの街の真の美しさを物語っているように思う。

Posted by taro at 2004年09月14日 17:50
Comments

Copyright © 2004, LynTaro. All rights reserved worldwide.