2005年01月25日

エレクトロニクス・シティー

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昨年5月、私たちが旅に出たときにアメリカのハイテク産業におけるトレンドだったのは職場のポストを可能な限り海外へアウトソースすることだった。ハードウエアの生産は中国へ、そしてソフト開発のプロジェクトはインド、特にバンガロアへと送られていった。この街の名前はシリコンバレーの地方紙であるサンノゼ・マーキュリー・ニュースで頻繁に取り上げられていたし、社員が職場で交わす会話の話題になることも多かったため、そこがどんな街なのか、そこで何が起こっているのかについては深い関心があった。

バンガロアにはインドの他の主要都市と同様、高級レストランやトレンディーなパブ、本物のブランドショップ、スタイリッシュなナイトクラブ、そして大きなショッピングモールがある。磨かれたヨーロッパ車が走り、MGロード街の洗練されたライフスタイルショップは現地の買い物客で賑わっている。

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ここに着いてまず気づいたのは、聖なる牛が道路上を闊歩しておらず、そのお陰で糞を踏まないように気をつけながら歩くことなく周囲を見渡せることだった。「ガーデン・シティー」とも呼ばれるバンガロアにはインドの他の年に比べて緑と公園が多く、街の肺ともなっている。その結果、大気汚染は未だにあるものの、私が訪れた他の都市に比べるとそれ程悩まされることはない。私たちはラルバーグ植物園を楽しむ市民たちを眺めながら日曜日の午後を過ごした。ちょうど満開の花々に囲まれながら家族連れがピクニックをし、恋人たちが手をつないで歩いていた。

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また、この街では現地の人々に夕食に招かれる二度の機会にも恵まれた。彼らの職業はさまざまで、ソフト技術者、不動産開発者、美術の大学教授、生産系企業のビジネスマンなどだ。彼らとの和やかな会話を通じてバンガロアの現在について学ぶことが多かった。彼らの生活はヨーロッパやアメリカに住む人々の現代的生活と何ら変わることはない。この洗練された街は、彼らのような有能なプロフェッショナルに快適なライフスタイルと現代生活の便利さを可能にしていることが分かった。

昨今のハイテクブームによって、彼らは今風の環境で生活を営むことが可能なのだが、バンガロアを全体的な視点で見ると新たな現代化の波はその全てには及んでいないようだ。ハイテク化していると聞いていた街にしては停電はあるし電圧も不安定だ。インターネットカフェではWindows98のベータバージョンや、良くてもWindows2000の評価版が使われている。マシンにインストールされているソフトは頻繁にクラッシュするし、アクセススピードはケララ州のバックウォーターよりも遅い。「これが本当にインドのシリコンバレーなのか?」と私は考え込んでしまった。「バンガロアの噂はあれほど聞いていたのに、信じられない!」

バンガロアの中心街で用事を済ませようとすると、そうでなくても効率が悪いインドの中でも平均以下の場合もある。西洋のブランド商品が並ぶ高級商店街付近で小包を発送しようとしたときなどはインドでも最悪のケースとなった。コチなどの小さな町やアーメダバッドのような都市では、バンガロアで要求された込み入った手順を踏む必要などはなかったのだが。通常30分もかからない国際郵便がここでは2時間半を要する悪夢のような体験をすることとなった。

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私たちは、近年の好況の恵みを得ることなく取り残された人々がバンガロア市内には多くいて、貧富の差が急激に広がっていることを目の当たりにした。貧しい人々が路上で物乞いするのを気にも留めず懐の暖かい人々が闊歩して通り過ぎる。この街に対する私たちの期待は、ものの見事に打ち砕かれ、バンガロアは埃っぽく汚れたインドの街の典型として私たちの目に映り始めた。ハイテク企業はそのほとんどが20キロ離れたエレクトロニクス・シティーと呼ばれる地区に居を構え、バンガロアの中心とは一線を画した存在である。つまり私たちがバンガロアの姿を塗り替える機動力と考えていた企業と市の内部に存在するさまざまな問題とは接点がないのだ。

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バンガロアはインドについて多くの人が言う「この国は貧しい国ではなく、貧しい人々が多く住む国だ」という言葉を的確に反映した街だと思う。ニュースメディアは口を揃えて近い将来インドは世界をリードする経済大国になると報道しているが、それはこの国全体について言えることでは決してない。ハイテクブームや他の産業での成長がもたらす経済の繁栄によって、インドが予想されているようなステータスに達することになるとしても、それはごく限られた少数の人々にとってのステータスだ。インドの経済、現代化、そしてサクセスについて耳にすることは多いが、この人口100億人のうちそれを味わえない人々がほとんどなのである。

過去3ヶ月インドを旅しながら痛感させられたのは、この国を一言、いや一行の文で表現するのが非常に困難だということだ。さまざまな表情とムードを持ち、それを理解したと思ったら一瞬のうちに豹変する。従って、インドの将来を思うとき、私たちはその動向を見守るしかない。このバンガロアという街については急激な変化が予想されると同時に、結局は何も変わらないだろうという予想も出来る。そしてインド全体についても全く同じことが予想できるのである。

Posted by taro at 2005年01月25日 14:22
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